埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター

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【YTTレポート】外傷CTの見方

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救急の高度外傷診療では短時間に的確な判断と手技を求められます。特に当センターは重症かつ難易度の高い症例が多く、事前の戦略と情報共有の場は継続的に行われています。今回は、当センターの初療から集中治療、小児救急からIVRまで全般をカバーする今本先生より、外傷におけるCTの見方についてお話いただきました。

高度救命におけるCT検査

当センターは外傷の分野において国内有数の実績を誇ります。そのため、他の医療機関では診療が困難な症例も積極的に受け入れ治療しています。

前半では、治療の基本的な話から、CT撮影が救急の現場でどのように使われ診療に活かされているのかを説明いただき、後半では、今本先生が救命救急の現場で何をどのように判断し治療をしているか、参加した医師、研修医のみなさんと一緒に考え、実際の診療と照らし合わせながら学びました。

現場はどのように患者を診るか

(漫画 「ブラックジャックによろしく」より)

例えば、画像のような状態で当センターに運び込まれたとき。

目に見えている血を止めたくなる気持ちをぐっとこらえて……、救急の基本「生理的異常」を確認します。

A(気道)、B(呼吸)、C(循環)

最後の循環に関しては、救急医だけではどうにもなりません。

実際、交通外傷のような鈍的多発外傷の出血は複数箇所の出血が起こります。

どんどん病態が進むと、血液がどんどん流出し凝固障害が起こってしまう。病態が進む前に勝負を決める時間との戦いになるのです。

では外傷性出血を止める場合の手段として、手術・IVRのような物理的止血と、体の中から血を止める働きをする機能的止血があります。どちらも組み合わせて止めることが外傷の場合大事になります。

今回の勉強会で持ち帰ってもらいたい数字がこちら。

ただ、採血検査は時間がかかります。CTを撮るまで血が出ている状態なので、40分前のトレンドであることに留意しなくてはいけません。

このあと、具体的な止血の手法と当センターの方針を共有いただきました。

当センターの外傷治療方針

当センターでは体幹部外傷の場合、一期的修復術をしています。超急性期に止血をすることで、脊椎、骨盤のオペを早い段階で行うことができるのがメリットです。

また、血圧が低い状態のCTも意外に思われることが多いです。なぜするのか。CTをしっかり撮影して、出血箇所を確認できると、治療計画をたてることができるからです。

風呂場に100円玉を落として、目隠しした状態で100円玉を拾うことは難しい。

きちんと確認してから治療すべきだというのが当センターの方針です。

CTをどうやって診る?

初療では血が出ているか、穴が開いてるか、骨折しているかをみます。

造影CTをみたとき、なんとなく白い、黒いところに注目しがちですが、気づくべきところを見落とさないように、血管がどうつながっているかを考えながら診ることが大切です。

実際、初療CTではFACT(Focused Assessment with CT for Trauma)で全身スクリーニングを行います。

頭、肺、膀胱直腸下、後腹膜血腫、骨盤骨ー臓器と、それぞれ診るべきポイントを教えていただきました。これらすべてを3分で診るのが第一段階。

第2段階でさらに細かく診ていきます。

当センターの出血性多発外傷治療戦略としては上の通りです。

造影CTを診る上で、知っておくべき項目をまとめたものが上の図です。

このあと、事例ごとにCTをみながら出血の状況と止血方法や判断を共有いただきました。

実際に診てみよう!

今回の目玉、実際の症例を診てみましょう。病院到着までの状況とCT画像を整理しながら、参加したみなさんと一緒に考えてみました。

20代男性、バイクによる転倒事故。前半でお話されたポイントを一つずつ押さえながら進みます。

「肝損傷、いいね!よく気づきました」

「惜しい!」

「こっちはおかしくない?整形の先生どうでしょう?」

今井先生のフィードバックがいただける場はとても貴重です。

血胸、肝損傷、背骨に何らかの損傷が考えられるところ、どうやって止血をすべきか助言をいただきながら、各科の先生も一緒に意見を出し合う時間になりました。

最後に答え合わせ。背骨が連続しておらず、大きくズレているのがわかります。

実際の戦略がこちら

最後に、この症例のポイントを共有いただきました。

日々、来た症例を見返したり、CTを見直したりしながら先生の考えをおさらいすること。

画像の読影力を上げるためには、過去の症例パターンをたくさん見ることが大切です。

そして、重症外傷を診るときは必要なデバイスを引き算で考えること。患者さんが来た瞬間に引き算しています。

「(外傷診療に)ビビらないほうがおかしい。研修医になりたての頃は外傷が一番嫌いだった」と話す今本先生。「手技ができるからこそ、今は落ちついて診ることができる。研修医のみなさんは学び、武器を増やしているときですから、頑張っていきましょう」と背中を押していただきました。

今本先生はIVRチーム・外科チームとしてインタビューに応じていただいています。

インタビュー記事はこちら:https://saitama-qq.jp/interview#imamoto

Young Trauma Talk(YTT)のご案内

Young Trauma Talk(YTT)は月に1~2回程度の頻度で定期開催しています。参加費無料。形成外科、感染症科、公衆衛生など、外傷治療に関わるさまざまな専門家を交え、少人数のトーク形式で情報交換する場です。

ぜひご自身のスキルアップ、情報交換の場にお役立てください。

次回の開催内容は、お知らせより告知します。

参加希望の方はお問い合わせフォームまたはTwitterよりお問い合わせください。

https://twitter.com/smcqq